5:葉巻の吸い方について
2015-06-03
物の本やインターネットには葉巻の吸い方について書いてありますが、かなりそっけないものがほとんどです。
「1~2分にひと吸い」「温度を上げずにクールスモーキング」
当サイトも同じようなことを記載していますが、ひとつの目安に記すと留めておきました。
それは、これは葉巻を味わい尽くす方法ではないからです。
葉巻を常に同じテンポで吸う、吸い方を一定にする、火口を加熱させすぎない……これは葉巻の持つポテンシャルと楽しみを殺す喫煙です。
まず、葉巻のRG(リングゲージ)には違いがあります。RGが大きい葉巻は強く吸い込まなければ燃焼が持続しません。大きな葉巻を吸うとすぐ火が消えてしまう人は、これが原因です。どのようなサイズの葉巻でも常に一定の吸入だからです。
大きい葉巻は強く吸います。中断せず燃焼を持続させることにより、喫味や香りの変化もよく感じられるのです。
つまり、「葉巻により吸い方を変える」のがよい吸い方なのです。
そして「クールスモーキング」です。
葉巻を熱くさせず、温度を上げすぎないよう喫煙をすべし、と葉巻について書かれているものには必ずといっていいほどこの記載があります。
しかしこれはかなり疑問です。
結論から言うと、「不完全燃焼」を誘発させているのです。
まず前提として、葉巻の知識は海外から入ってきました。つまり、あちらの基準での喫煙方法の情報がそのまま入ってきているわけです。
体格は日本人とは大違いです。肺活量にも大きな隔たりがあります。
そのまま受け取ってしまうと、吸気が不十分でよく燃焼していない状態になりがちになるのです。
香木でもなんでも、くすぶった状態では香りは完全に開きません。燃焼により香りは揮発し、味わいは昇華します。
ためしに強く吸い込んでごうごうと炎を焚き、葉巻の燃焼温度を上げて喫煙してみてください。普段こんなに強く吸わない、それ以上にさらに吸い込んでみてください。強喫煙です。
薄皮がめくれるように「別の味」が鮮烈に現れます。それが「完全燃焼」です。
強く喫煙した葉巻の火口は尖り、煙は熱く、持つ指には熱を感じます。さまざまな文献にそれはよろしくないこととありますが、どういう理由でよろしくないのでしょうか。日本の葉巻の指南には、このように理由が定かではない決まりごとが多々見受けられます。
もし、あなたが葉巻を始めたばかりの人であるならば、このような不可解なルールを疑ってかかってください。それらのほとんどには何の根拠もありません。
クールスモーキングするために、葉巻の灰はなるべく落とさない。その灰を通して空気が冷えるからだ、というものもよくありますが眉唾です。
なぜなら空気はフットの直線方向からだけではなく、その周囲から吸い込まれるもので、灰を通った空気も灰自体が熱を帯びているので温度は下がりません。(もしできるだけ温度の低い空気をフットに入れるのであれば、常に灰を落とさなくてはいけないことになります)
また、空気の温度は低くても高くても葉巻の燃焼温度には関係ありません。燃焼温度に関係するのは「空気の量」です。
おそらく見た目の問題で、灰をせわしなく頻繁に落とさせないためにこのような定型句が生まれたのかもしれません。
しかし、灰を落とさないようおぼつかない手で喫煙するほうが野暮です。灰皿に葉巻を置いたときに灰が折れればそれでいいのです。本来の目的が、こうやって微妙にずれていってしまうのかもれませんね。
煙が熱くなるまで葉巻を強く吸うと辛くなる、というのもありますが、それは単純に「辛さ」でしょうか。
完全燃焼で目覚めたペッパーやミント、シャープな別のテイストではないでしょうか?不完全燃焼に慣れるとはっきりした喫味は刺激が強いように感じるかもしれません。もし、それが本当に単なる辛さであればその葉巻は乾燥気味です。
もちろん、常にこのように強喫煙するのは難しいことです。自分のペースというものもあります。
そうであれば、手綱を緩めてください。喫煙に強弱をつけ、移り行く味わいの変化を楽しみましょう。
長くなりましたが、この喫煙方法が絶対というわけではありません。その人それぞれの好みとは別の話です。葉巻は自由。嗜好はその人だけのものなのです。
(余談として、ハバノスのオフィシャルの解説本には「ペティエドムンドの喫煙は20から25分」と記してあります。標準的な日本人の肺活量での喫煙と比較すると、大きな隔たりがあります。日本で出回っている喫煙の仕方や喫煙時間は、海外の情報であるということを失念して日本向けにリサイズしていません。)