Montecristo Grand Edmundos Edicion Limitada 2010

2017-04-27

モンテクリストはエディシオン・リミターダを数多く輩出してきた。この2010年に出たグランド・エドムンドもそのうちのひとつだ。
他のELと同じように2年熟成させた葉から作り出され、10本入りSBNで販売された。サイズはRG52×150mm、ビトラ・デ・ガレラ:カニョナソ(ビトラ・デ・サリダ:ロブスト・エクストラ)。当時はこのリングゲージの太さに誰もがみな目を見張ったが、最近ではスタンダードになった。

濃いめのコロラド・マデューロのラッパーはタバコ葉に含まれる精油成分でまだらに染まっている。年数を経ても染み出したオイルに表面は覆われ触れるとしっとりしている。
香りは強いウッドを放ち、フットから強烈なタバコ香を噴出させる。

フットに火を灯すと、重厚なウッドが湧き出た。喫煙する。
ビターを伴う、面の広いウッド。煙の粒子がきめ細かく、舌全体に一気に味わいを放つ。
ひと吸い後に甘みが立ち昇ってきた。じわりと広がるようなこれも面の広い甘みだ。
伽羅、ビターキャラメル、ドライチェリー、古い杉の巨木、ガス香。
煙を吐いた後の口中に残る、白粉のキラキラした微粉末。
太いリングゲージが多彩なテイストのハバノスをさらに立体的にしている。煙量も豊富で、目の前が真っ白になるのにえも言われぬ多幸感がある。
2センチほどで灰を落として強喫煙すると、鋭い白粉と素朴な甘みの乾いたこしあんが現れ、コントラストの強さに目を見張る。
この堂々としたビトラは、急かすようにスモーキングしてもしっかりと受け止めてくれ、スモーカーのわがままに柔軟に応えてくれる。


ELもそのカテゴリの中で、それぞれのブランドの持ち味をちゃんと生かしたテイストとなっている。レシピの緻密さだろう。モンテクリストのアーシーなウッドが、極限まで昇華されている。
白粉と乾いたこしあん……これはあんこ玉だ。薄い木目の折り箱に詰められたあんこ玉。
終始それがテイストを支配している。そして豊富な煙のむせるようなアロマ。ハバノスという時点で高品質なシガーだが、それのさらに上をいくELの豪華絢爛な紫煙。確実に思考を奪っていく。食べ物も酒も葉巻も全てそうだが、極上のものを味わっている時は人はバカになる。バカになれるほど没入させられてしまうのだ。

バカになっていたらすでにELリングまで火が回っていた。唾液が口中に噴出しているし、はたから見たらバカの数段上だ。
7年の経年変化でシガーは痩せ、リングはするりと外せる。もちろん味わいが痩せたというわけではない。絶妙な枯れがタバコ葉に含まれるニコチンを芳香成分に分解し、パワフルなうま味へと変化させている。時間と水分と微生物の働きに瞠目する。

吹き戻すとフレッシュなウッドが鮮烈に目を覚ます。
陳皮、ナツメグ、甘いレーズン。
鼻を通る白粉に戦慄し、広大なアーシーさに鎮静する。息つく間もない変化の嵐に揉まれ、短くなったシガーの熱さに目を覚まされる。最後にペッパーをひと刷毛、旅は終わりだ。

60分で喫了。シガーはいつも夢幻の時間と無限の楽しみを与えてくれるが、グランド・エドムンドはその中でも際立っている。

LABEL : Montecristo 【Edicion Limitada】