H.Upmann Petit Upmann 70S

2017-06-21

ペティアップマンといえば必ず出てくるエピソードはJFK、ケネディ大統領だ。
"キューバとアメリカの関係が極度の緊張に達した1962年2月6日、ケネディ大統領が首席報道官であるサリンジャーを呼び出し、「明日までにペティアップマンを千本以上、集められるだけ集めろ」という指示を出した。
サリンジャーは翌日までにペティアップマンを1100本集めた。ケネディ大統領はそれを確認すると、キューバ製品のアメリカへの禁輸法案にサインした"

だいたいのところは、こんな感じだ。かなり眉唾な話だが、尾ひれ背びれが付き形を変えて様々なバーやシガーショップで語られてきた。

ペティアップマンには2種類のサイズがあり、片方はハンドメイド(RG36×115mm)、もう片方はマシンメイド(RG31×108mm)だ。今回のこちらはマシンメイドとなる。JFKがサリンジャーにどちらを集めさせたのかは謎だ。そもそも、なぜH.Upmannの中でもかなり小型に入るこのシガーを集めさせたのかがミステリーだ。単純に小さい葉巻が好きだったのだろうか。


マシンメイドなのでセロハンに入れられたペティアップマンのビトラは、ビトラ・デ・ガレラ:ペティ(ビトラ・デ・サリダ:スモール・パナテラ)。
1960年代以前から生産され、5本入りから50本入りの様々なパッケージングで販売されていたが、2002年にすべてがディスコンとなった。

揮発したシガーの成分が付着し、茶色くなったセロハンから取り出す。表面はぼこぼこと節くれ立ち、マシンメイド特有の楕円形のヘッド。ラッパーはコロラドで完全に水気はないが、セロハンで保護されていたためかウッドとタバコ香を未だ纏っている。

フットを吸ってドローを確認し、ヘッドをフラットカット。
かなり乾いた感触だったが、ばらばらに分解しなくて良かった。空吸いするとドローは通る。


フットに火を回す。
喫煙すると、非常にボディの強いビターな煙が口腔に充満した。
さすがにこのサイズで40年以上の時間は……と考えたが、ビンテージの最後のひとかけら、タバコ葉の最後の主張はまだ残っている。
ベースはウッド。ビターが主軸となり、強喫煙するとカンゾウのようなテイストが現れる。喫味はミディアム。
アフターに口蓋に感じる青っぽさは何だろう。自分より年上のシガーに若さを感じるとは、強い驚きを感じた。

サイズとしては非常に小さい部類に入るシガーだが、情報量が半端ではない。濃い紅茶のように変化したテイストはビターが抑えられ非常に引きつけられる。何より凄まじく馨しいアロマが顔の周りを覆うと、喫煙が止まらない。

葉巻内部が蒸れてくるともう終盤だが、ギリギリまで吸うために細心の注意を払って喫煙する。細く、小さい葉巻ほど喫煙は難しい。たとえばシガリロなどはその最たる物だ。初心者にシガリロをすすめるのは、スモーカーから見るとあまりおすすめできないのはこのためだ。

終盤の柔らかな優しいウッドまで、目の回るような変化を果たし25分で喫了。
完全なビンテージを味わうのはスモーカーの至福だ。もう手に入る事はないであろうシガーであれば、それはひとしお。
シガーは吸われるためにあるので、記憶の中に残れば良い。

LABEL : H. Upmann 【Aged】