Hoyo de Monterrey Churchills '08

2018-04-20


 

オヨ・デ・モントレイのチャーチルサイズはこれ以外にもコンコルデが存在したが、廃盤となって久しい。そしてこのチャーチルも2012年に廃盤となり、すでにこのブランドにチャーチルサイズは存在しない。

1960年代からドレスボックスで発売されていたのは確認されている。25本入り。リングはダブル・コロナスと共通で、通常の宝冠のモチーフではなく丸みを帯びた形の特別なリングとなっている。
よって現行ではオヨ・デ・モントレイ ダブル・コロナスにチャーチルの面影を見ることができる。

サイズはRG47x178mm、ビトラ・デ・ガレラ:フリエタNo.2(ビトラ・デ・サリダ:チャーチル)。
ラッパーは明るめのコロラド。香りは深いウッドを湛えており、10年を経ても喫煙欲を刺激する力がある。表面は油分が少なく、葉巻が痩せて細い葉脈が浮き出している。
ヘッドをフラットカット。切り屑を飛ばし、フットを炙ると甘いウッドが立ち込めた。

喫煙する。さらさらとしたシロップ状の甘みが絡む軽快なウッド。
花蜜のような甘さ。わずかに白墨、化粧品、アーモンド。そしてかつおだしのような強烈なうま味。
非常にソフトなタッチだ。経年変化でニコチンは芳香成分へと完全に昇華し、それを全く感じさせない。ライト。
もちろん薄さを感じさせる喫味という意味ではない。背景に広がるウッドを眺め、刻々と時間、喫煙の微妙な強弱で積層的な味わいが紐解かれるように味覚を刺激する。非常に立体的だ。

 


 

ライトなテイストなのにコクが深く、突っ込み気味で喫煙してしまいそうになるのをコントロールする。
やがてブーケが開き、白粉の奔流が顔を撫でる。
多くのフィラーを奢られたチャーチルサイズの本領が発揮され始める。

綿菓子のような繊細さと華やかさが同居するスムースな煙は、ブローすると更に白粉感が高まり咥えているものが枯れ草を巻いたものだとはにわかには信じられなくなる。もっと別の何かの、食べ物の味だ。脳が混乱する。

終盤には枯れた感じのビターが花開き、終局を予感させる。
白墨が太くなり、杉材が燃えて爆ぜる音が聞こえるかと思うほどくっきりとウッドが立つ。
白粉とビターがせめぎ合い、絶妙なバランスが唾液を誘引する。どこまでも軽いタッチで、しかしくっきりとした輪郭とアフターを残し70分で喫了。

葉巻は熟成が全てではないが、ベストな状態で保管された葉巻をベストなタイミング吸うと、その巧妙さに唸らされる。このチャーチルもまさにそれだった。キューバ直送品を10年熟成させたものだったが、その出来栄えに思わず笑みがこぼれた。

このような長いサイズのビトラは多くのブランドから失われたが、もともとハバノスはそのときどきの時代のスモーカーのニーズに合わせて新たなビトラを作り、統廃合を重ねてきた。
オヨ・デ・モントレイにも新たなラインや新作が数多く放たれている。
個々人の失われたビトラへの憧憬はさておいて、ハバノスに与えられ多く用意されている楽しみを享受するのがスモーカーの正しい姿である。Carpe diem.

LABEL : Hoyo de Monterrey 【Aged】