Romeo y Julieta Prince of Wales '98

2018-08-08

以前クレメンセアオスでも触れた、ロメオ・イ・フリエタの3兄弟のひとつ、プリンス・オブ・ウェールズ。
この名称はイングランド王国の王位の法定推定相続人に与えられる。一介の首相だったチャーチルなどよりよほど優遇されるべき名だが、残念ながら2002年にディスコンとなってしまった(一説には2004年まで生産されていたという話もある)。不敬である!
余談だが、2018年8月現在プリンス・オブ・ウェールズはチャールズ皇太子だが、ボリバーにはかつてプリンス・チャールズという名のシガーがあり、現在全く同じビトラがロイヤルコロナスとして生産されている。

さてウェールズ公である。
サイズはRG47x178mm、ビトラ・デ・ガレラ:フリエタNo.2(ビトラ・デ・サリダ:チャーチル)。25本入りと10本入りのドレスボックスが販売されていた。
箱から一本取り出すと、紙の匂いが強い。ドレスボックスで長期間保存するとこうなる。紙はシガーの香りや成分を吸収する。
しかし、フットからはしっかりタバコ香とウッドが香っている。

期待を込めてヘッドをフラットカット。すでに20年を過ぎ、リーフ自体の保湿力が衰えているので乾燥気味は否めず、ラッパーを割らないよう細心の注意を払う。
フットに火を灯すと、焼きたてのクッキーのような香りが広がった。
駅のクッキー屋さんの前を通りかかったときのあの匂いだ。

喫煙する。これがロメオ!?と面食らうような濃厚な煙が口腔を覆う。
ファーストタッチはウッドのビターだが、その裏に強い甘みが隠されている。
表面にざらざらと砂糖をまぶしたクッキー。古い日本家屋の柱。青りんご、干し椎茸、ガス香。20年を経て封印を解かれ、香りと味の奔流が渦巻く。スモーカーならその波に身を躍らさらざるをえない。
強いうま味に深いコク。これは味覚の暴力だ。ミディアム。


びっくりさせるような煙の濃厚さは中盤以降やや抑えられる。
メロウに収斂し、その変化の速度と手口に舌を巻く。
枯れ葉感が強まり、甘さはやや控えめになる。シロップのように変化した。
軽く白粉が香り、蒸したチキンのようなタンパク質感がある。浅煎りのコーヒー、柑橘類、リッチなブーケ。

ブローするとさっぱりを超えてすっきりとした甘みが滴る。
白粉と澄んだ甘みはあとを引き、引きずり込もうとする。突っ込まないよう踏ん張るこちら側と、シガーとスモーカーの綱引きだ。
味わいはどんどん繊細に、アロマは豊かになっていく。
残り3センチほどで赤ブドウのような味の塊が噴出し、シガートレイに置くのが惜しい。指が熱くなるまで堪能できる。
70分で喫了。

背景にウッドを示し、幾層にも重なった積層感、テクスチャの立体感は感服するほど。
クレメンセアオス、チャーチル、プリンス・オブ・ウェールズは特徴的にビター、バランス、スイートとそれぞれ分けられるが、ハバノスがチャーチルを残したのは中庸を取るのは当然としても恨みがましい。

フレッシュシガーは素晴らしいが、しっかり管理されたビンテージシガーの楽しみもそれに全く引けを取らない。両方楽しんでこそのハバノスだ。
そしてプリンス・オブ・ウェールズはその楽しみがいっぱいに詰まっている。どこかで見つけることがあったら、迷わず火をつけてほしい一本。

LABEL : Romeo y Julieta 【Aged】