H.Upmann Noellas '10

2020-12-09

ノエラスは1960年代から1980年代まで製造されていたシガーで、2009年にLa Casa del Habano限定品として復活した。パッケージングもオリジナルと同じガラスジャーがリバイバルとなり、当初5000箱の限定生産の予定だったが、大人気のため2013年以降も生産が続いている。

ボール紙の外箱を開けると、中に革紐の持ち手がついたガラスジャーが入っている。
他のセラミックジャーのようにパッキンはついておらず、簡単な金具で蓋を軽く留めているだけだ。
表面はシールでデコレーションされ、内側には湾曲したシダーが入れられている。25本入り。
サイズはRG42x135mm、ビトラ・デ・ガレラ:コサコス(ビトラ・デ・サリダ:コロナ)。このビトラもオリジナルと同じものだ。

香りはウッドが支配的。
コロラドのラッパーはやや雑で、葉脈が多い。硬化していて年月の経過を感じる(葉巻の葉は経年変化で伸縮性を徐々に失っていき、それにより吸湿性も衰えていく。ビンテージシガーが乾燥しやすいのはこれが原因だ。シガーは古くなっていくにつれ湿度・温度の設定がシビアになっていく)。臙脂色のLCDHリングと、変色したアップマンのリングが変化を予感させる。


ヘッドをフラットカット。フットに火を回す。皮ごと小麦を焦がした芳香。
喫煙する。柔らかな小麦の甘みとビターな焦げ感。感触を感じるほどの濃いクルミ。
背景はウッド。まろやかなタッチに絶妙な甘みと枯れ感が、良いビンテージに育った実感を与える。
焼いて時間がたった、やや酸味を含むバゲット。ナッツのタルト。ほのかにタニック。ミディアムライト。

ギュッとくるニコチンは経年変化で芳香成分へと昇華し、枯節のようにうま味だけが引き立っている。骨格だけが残った味わいは、味蕾にダイレクトに感じる。古いラムのようなコク。

中盤、焦げ感が増してザクザクと音でも立てそうな気配になる。このトースト感……!
パンの酵母のようなあのふわっとした香りが鼻腔からあふれる。それとナッツとウッドが絡み合い、複雑な何かの料理のような味わいは奥行きが深く、気軽に火をつけたこの葉巻で、極上の体験へといつの間にか足を踏み入れていたことに気づき驚く。


スカスカになったリングを抜いて終盤、ふつふつと立ち昇ってきたペッパーは見るも嵐になり、強烈な喫味を見せる。喫煙の強弱でこれは現れる。ゆっくり吸うと乾いた柴の焚き火と浅煎りのコーヒーだ。
ブローするとウッドと蜜が一体になった重厚な甘さがしみ出る。

ビンテージシガー特有のうま味成分を味わいながら、50分で喫了。
若いときも充分な味わいを持つシガーだったが、手元で10年を経たこれは大きな満足感を与えてくれた。やはりLCDHものはハズレがない。先々の事も考えてレシピが組み立てられているのを感じる。

適切な環境を保ち続ければ、葉巻はそれに答えてくれる。何度も言うようだが、ハバノスにとっての適切な環境とは温度16-18℃、湿度65-70%だ。
それは決まっている。

LABEL : H. Upmann 【Aged】 【LCDH】