Bolivar Inmensas '05

2020-11-19

ボリバーのロンズデールは2種類ある。
ひとつはビトラ・デ・ガレラ:セルバンテスの「ロンズデール」(ゴールドメダルもこれに当たる)。
もうひとつがビトラ・デ・ガレラ:ダリアの「インメンサス」だ。
どちらもポピュラーネームたるビトラ・デ・サリダは「ロンズデール」で、リングゲージ42と長さ165mmに与えられる製造現場におけるビトラは「セルバンテス」、リングゲージ43と長さ170mmは「ダリア」だ。ほんの少しの違いで製造現場では規格が変わる、この概念がビトラでつまずく人のいる理由だろう。無論「ビトラ」は葉巻の雑誌でも使われるポピュラーな用語なので、頭の隅にでも置いておくと良いと思う。

さて、何かと比較される両者だがインメンサスのほうがロンズデールより長命で1960年代から2009年まで製造された。パッケージングは25本入りドレスボックス。
箱を開くと、わっと広がるレザーの馥郁たる芳香。
ラッパーはコロラド。経年変化か、ややヨレぎみ。ボックスプレスでフットが四角くなっている。
フラットカットでフットに火を回す。

古い手紙束を燃やした香り。喫煙する。
一瞬強烈なウッドが立ったが、即座に収束して生々しいウッドとたっぷりの蜂蜜のニュアンス。
そして紙……古新聞の束か。
甘みとウッドの調和を何に例えればよいか。削り出したばかりの杉のスプーンですくい取る蜂蜜か。そこにレザーとビターがほんの少し散らされ、得も言われぬ奥行きを醸し出している。フル。
強く喫煙するとぐっと華やかさが増し、ブーケがひときわ太くなる。
甘くなりビターになりという変化を繰り返す。それも何層にも重なり瞬間瞬間で表情を変え、無限に遠い景色を見せる。


中盤、甘さはやや薄れビターとナッツに支配される。皮付きアーモンド。
うま味の強いレザーに、柔らかいトーストのような小麦感。
喫感自体はかなり強めだが、柔らかいテクスチャの煙は一切引っかかりがなく、スムースに舌に溶け込む。ナツメグ。若干の胡椒。

リングに迫る終盤、ブローするとほんのり白粉と石鹸香が湧き出す。
魚介類の出汁が強烈なうま味とコクを見せ、終局の兆しを物ともせずグイグイと引き込まれる。
第五の味覚の奔流に押し流され、脳が多幸感の煙に包まれ霞がかった。
60分で喫了。

ロンズデールにハズレなし。
素晴らしい経年変化を見せ、まさに吸い頃のビンテージシガーになっていた。
こういう物に触れると、やはり我慢できずにすぐ火をつけるのではなく、少しは熟成に回すべきだと反省する。
が、誘惑に勝てるスモーカーは非常に少ない。むしろ誘惑に弱いからスモーカーなのだ。

LABEL : Bolivar 【Aged】