Cohiba Lanceros '01

2015-06-03

 

コイーバである。

ブランドについては説明する必要はないので、割愛する。
ランセロである。
これについても説明する必要はないので、割愛したいがそれだと字面が寂しいので蛇足ながら記しておく。
この葉巻は1964年に生まれたが、1984年に市販されるまで一般に手に入れることは非常に難しかったという。
それは、この葉巻は外交の贈答用の品として生み出されたといういわくがあったからだ。
流通以前はキューバと外交関係があった政府高官のみが味わえる代物だったという。
ちなみに「ランセロ」の名付け親はフィデル=カストロといわれている。
 
サイズはキューバシガー伝統の38×192、ラギートNo.1(ロング・パナテラT)。
しなやかなラッパーはわずかに産毛が残っている。ひと目で質の高さがわかるラッパー。
色はコロラド・クラロ、コイーバ色だ。ヘッドにはランセロのアイデンティティであるピッグテールがぴょこっと立ち上がっている。

香りは力強いウッディに芯のあるタバコ香。期待を込めてフラットカット。

ラギートNo.1というサイズはドローがきついと目も当てられないが、これについてはそんなこともなくスムーズなドローだった。
 

フットを炙ると、若い杉の青葉を燃やした匂いが立ちこめ、おやっと手を止める。
ひと口吸い込むと、扉が開いた。
目を覚ました身震いのように落葉樹の焚き火が広がったのは一瞬で、すぐさま力強いアロマが沸き立った。
ナッツ、オークを背景に従えた柔らかな花蜜、カカオ、バターそしてビンテージシガーにつきものの揮発性のガス香。
強く喫煙するとシャトー・ラトゥールで味わった「薔薇の花園」の入り口を彷彿とさせる予感がある。
辛み、苦味は皆無で非常にどっしりとしており、目を閉じると目の前に杉の巨木がありありと浮かび上がる。ミディアムフル。
 
味わいは緻密で立体的。薄いグレーの灰はホールドがよい。
一般にコイーバでもシグロは栗や蒸かし薩摩芋のような甘みが感じられるが、このランセロはもっと直線的に、唾液腺をダイレクトに刺してくる。
 
きつく吸い込み、どんどん燃焼させてやると面白いようにガス香が立ち上がってくる。
口腔で爆発するように炸裂するそれは陶酔するような快感だ。
コクも旨みも他のキューバンシガーとは規格外。あとを引くのでどうしてもスパスパといってしまいそうになる。危険だ。
中盤、木質感は広がり狭まり、甘さも伸びたり縮んだり変化をするが、一貫してガス香が伸びやかに突き抜けてくる。
葉巻内部が蒸れ、マイルドに、しかしヌケ感はない。今度は覆い尽くすように広がりを持ち、甘美なココアがハッとするような知覚の果てまで刺激してくる。
 
終盤も近づくとスパイス感がパチパチと立ちはじめる。
これはミント…ペパーミントだ。ボディはやや深くなり、ひと吸いごとにまるで火をつけたばかりのように鮮烈なテイストは瞠目せずにはいられない。
 
110分の至福。まさにランセロはコイーバの白眉。

LABEL : Cohiba 【Aged】