Punch Coronas 70s

2015-06-03


パンチ・コロナスは2009年にディスコンの憂き目にあっている。
Habanos S.A.のコロナ狩りは歴史あるこのブランドにまで及んで、もはやコロナサイズは数えるほども残っていない。
とくにパンチはディスコン前にすでに生産数を絞っていたのか品薄で、市場にもほとんど残っていない。
 
サイズは42×142、コロナス(コロナ)。スタンダード中のスタンダードサイズだ。
古い劇場のような匂い。
フットが四角く、化粧箱の匂いが移っているようだ。
ラッパーはコロラド・クラロ。
表面はカサカサしており湿度を保つ力が衰えているのがわかる。触れてみるとラッパーがバインダーからやや乖離しているような感触だ。ビンテージと呼んでも差し支えない年数を耐えてきた葉巻。所々白っぽいのはブルームの名残か。
 
ヘッドへのダメージが心配だったがシザーでカットする。成功。
空吸いでドローを確認する。問題はない。
フットを炙ると、思いのほか濃いウッドが立ち昇ってきた。
ヘッドに口をつける。
 
樫の棍棒で後頭部を殴られた。
鋼鉄のように密度の高いウッドが口腔に炸裂する。
痛みすら覚える強烈なビターは吸気の途中から形を変え、煙を吐き出しアフターには完全に表情を変え穏やかなレザーへ変化する。
急激すぎるその変化は眩暈さえ起こしそうだ。
 

喫味はミディアムフル。旨み、コクともに器から溢れている。
強烈なビターはなぜか爽快感さえ感じさせ、仁丹粒を連想させる。
灰を落とし、強喫煙する。とたんに鮮烈な香木の花が開き、顎の付け根をギシギシ刺激してくる。唾液が止まらない。
 
中盤になると葉巻の内部が蒸れ、味わいもほどけてくる。
ウッドは夢のように形を変えて柔らかくなり、仄かにナッツを薫らせる。ミディアム。
驚くほどのテイストの変化だ。鮮やか過ぎて、まるで狐につままれたようだ。
 
と思っていたら終盤、またひとしおヘビーなウッドが燃え上がる。まったく油断ならない葉巻だ。
コロナの体躯にこんな変化が凝縮されていたのかと驚きの連続。グラデーションのような、だまし絵のような、そんな驚きを味覚に与えてくれる。
60分で喫了。
 
時代の移り変わりとともに葉巻のトレンドも変化する。
それを嘆いたり文句をつけても意味がない。そもそもこのような葉はすでに栽培されていない。
この感動を忘れなければ、葉巻はそれでいいのだ。

LABEL : Punch 【Aged】