Cohiba Robusto Reserva Cosecha 2014 '18

2018-03-07

黒いベルベットをめくり、ピアノブラックの箱を開けると、拍手喝采が鳴り響いた。
いや、それは自分の頭の中でだけだ。黒いレゼルバリングに身を包んだコイーバ・ロブストが鎮座している。
現行のホログラフが入ったきらびやかなコイーバの金のリングと、黒のリングのコントラストが凄まじい。

待ちに待ったコイーバのレゼルバはロブストだ。2003年に発売されたコイーバ・レゼルバ・セレクシオンが頭をよぎる。
サイズはRG50x124mm、ビトラ・デ・ガレラ:ロブストス(ビトラ・デ・サリダ:ロブスト)。通し番号入りのブラックラッカー・ボワト・ナチュールに20本入り、5000箱が生産される。

レゼルバなので3年熟成させた葉を使用し、最高の職人が巻き上げる。一本取り出ししげしげと観察する。
非常にきめの細かいラッパーで美しく編んでいる。巻く、というより編む、という言葉のほうが、この葉巻には相応しいような気がする。
香りはごく薄く、ほんのわずかにタバコ香。キャップラインは深い。
ドローチェックのためにフットを吸うと、すでにバラのような化粧品のような、何か女性的な味わいを感じた。

ヘッドをフラットカット。切り口からふわりと柔らかいタバコ香が香った。
フットに火を回す。甘めのウッドが立ち昇る。
喫煙。甘い!コイーバを凌駕している。
沸き立つバラ、バラ、見渡す限りバラの庭園だ。ウッドと蜂蜜、栗を通り越して薩摩芋。
背景はウッドがベースだが、味わいが緻密に重なり合い、瞬間瞬間でそのテイストは形が変わり脳が追いつかない。
桜のチップ、洋梨、浅煎りのコーヒー、追いつかない。振り返ると巨大なケヤキの大木が見下ろしている。ミディアムフル。

 


 

3センチほどで灰を落とし、強喫煙する。
バラ園に烈風が吹き、花びらが口一杯に吹き込んだ。アフターに固まりのような白粉、花粉。思わず咳き込む。葉巻の味わいではない。もっと何か、別なものを口にしているような錯覚を覚える。
葉巻ではないなら、これは何だ。
レゼルバだ。

炎が黒いリングにさしかかるころには、おそらくいくばくか脳が融解している。
舌と鼻から取り込んだ味わいと香りが脳を溶かしていくのが、はっきりとわかる。
木の皿にいっぱいに盛られたスイートポテト、濃いダージリン、燃え上がる杉の大木の束。そしてレザーのタッチ。脳に感じる色彩は黄色、いや薄い金色だ。
完全にこの葉巻の虜になってしまったことに気がついたが、すでに遅い。恐ろしさもある。

 


 

終盤、ふたつ目のリングにさしかかるころにはこの葉巻をもっと手に入れるためにはどうすれば良いかだけを考え込んでいることに気付いた。
ブローすると焼き栗と鮮烈なビター。そして複雑極まるアフターに翻弄され、それを繰り返すだけの喫煙人形になる。
燃え上がるバラ園に立っていたが、ふと気がつくと指に熱を感じるほど葉巻が短くなっていた。構わず吸う。

新たなシガーに火をつけるたびに鮮烈な驚きを感じるが、レゼルバ、グラン・レゼルバは別格だ。人生が変わる、というのは大げさだろうか。いや、そうは思わない。
50分で喫了。
もしこの葉巻が一般に広く流通するのであれば、政府はそれを禁止するに違いない。あまりに麻薬的だからだ。

LABEL : Cohiba 【Special】