Punch Sir David 2018 ER Hong Kong

2019-07-11

サー・デヴィッド・タンはシガー業界以外でも名の知られた人物である。
日本にも展開していたファッション・インテリアブランドのシャンハイ・タンの創業者で、北京・香港・シンガポールのチャイナクラブの創設者でもある。
しかし、なんといってもアジア・太平洋地域のハバノスのディストリビューター「パシフィック・シガー・カンパニー」(PCC)を立ち上げた功績は大きいだろう。彼はファウンダーである。
現在、PCCのハバノス取扱量は各ディストリビューターの中で2位になるまで成長した。アジア圏のシガー文化の土台は彼が醸成したといっても過言ではない。彼は2017年に亡くなった。

彼の功績をたたえ、ひとつのエディシオン・レヒオナルが生まれた。それがこの「サー・デヴィッド」である。
ビトラは生前、彼が愛してやまなかったPunchのダブルコロナが選ばれた。

サイズはRG49x180mm、ビトラ・デ・ガレラ:パコス(ビトラ・デ・サリダ:ダブルコロナ)。
50本入りSLBが1200箱生産された。

一本取り出して葉巻をチェックする。
香りは深いタバコ香。通常のパンチのリングと、「EXCLUSIVO HONG KONG」のERリングだ。ERリングは上に半円型に広がりこのシガーだけの「SIR DAVID」が入る。タイプ的には以前フェニキアから出されたものと同型リングだ。
ラッパーは濃い目のコロラド。葉脈が少なく美しい。オイルっぽさはあまり感じない。

ヘッドをフラットカット。刃を当てた瞬間、かなりリーフが詰められていることがわかる。空吸いしてみるが、ドローは良好。腕のいい職人が巻いたのだろう。

フットに火を回す。素晴らしい芳香が広がった。大きく広いウッド。チークだ。あまりに広く端が伺えない。そこに控えめな甘さが一拍置いて重なり、ただ無限が眼の前にある。
ウッドを背景にカシューナッツ、白粉、レザーが整列し、アーシーやビターが小気味よい。ミディアム。
ぐっと目を引く跳ねたテイストではないが、シガーのスタンダードな味わいすべてが平均点を大幅に上回るクリアさで集合している。
灰を落として強喫煙すると白粉が鼻を吹き抜ける。煙というより輪郭のある物体のような存在感だ。

 

中盤は相互に引き出し合うウッドと甘みを存分に堪能しているうちに、あっという間に過ぎてしまう。美味しい葉巻はなぜすぐ短くなってしまうのか。永遠の謎である。
アーモンドの皮。モカマタリ。すべてのテイストは平坦ではなく、振幅し立体的だ。刻々と表情が変わり、長大なダブルコロナというビトラの重さは微塵もない。

リングを外し終盤、葉巻内部が蒸れてくる。ブローすると圧倒的な白粉とアフターにホワイトペッパーが香る。その絶妙なバランスに酔いしれる。神妙。
根元の方になってくると、覆いかぶさるようにウッドが伸びる。

80分で喫了。
見た目のインパクトよりも控えめな喫感だが、パンチの真髄が惜しげもなく秘められている。
サー・デヴィッド・タンは、生前パンチ ダブルコロナを半分にカットして吸っていた。忙しくて時間がないが、最高の材料で職人が作り上げるダブルコロナを楽しみたいというその大胆な手法、誰しも真似できるものではない。そんなことを考えながらこれに火をつけるのもまた面白いだろう。
ありがとうPCC、ありがとうサー・デヴィッド・タン。

LABEL : Punch 【Edicion Regional】