H.Upmann Monarcas '01
2022-12-12
H.Upmannにはかつてチャーチルが2種類あった。
現行のサー・ウィンストンと、もうひとつはこのモナルカスだ。
サー・ウィンストンは言わずもがなウィンストン・チャーチル公の名前から命名されたが、Monarcasはスペイン語で「君主」を意味する。
モナルカスは1960年代から製造が始まり、2009年に廃盤となった。
25本入りドレスボックスでチュボス入りは2009年まで、チュボス無しは2006年までの生産だ。
60年代にはチュボスは100本入り箱(カホン)でも生産された。
箱から取り出すと、ほのかにウッドが香る。
紙で覆われたドレスボックスは香りを吸いやすい。ほとんど残り香だ。
ラッパーは薄めのコロラド。長い時間を経て、バンチからラッパーがやや乖離したような手触りになっている。
ヘッドを浅くカットしてフットに火を回す。
白樺の焚き火の煙が立ち昇る。
喫煙すると、澄んだウッドが口腔を満たす。端の方にビターが潜んでおり、この対比が素晴らしい味わいをもたらしている。
清涼感のあるスパイスのようなアフター。それでいてコクがある。
アーモンドの皮、石鹸、小さな花。うま味が味蕾を刺激する。
ミディアムライト。当然弱いという意味ではなく、柔らかくもはっきりとした輪郭が味わいを構築している。
香りも素晴らしく、控えめだが確かな主張がある。
中盤は喫感がやや強まる。
立体的、積層的な味わいは深くどこが端がつかめない。
スムースなテクスチャの奥へ踏み込むと、大樹の年輪のような層にはまり、一瞬も変化は停滞しない。
主な属性はウッドだが、振幅は無限に変化し時折ビターやレザーにも振れ、めくるめく。
終盤はウッドが支配的になる。
ブローすると鼻を抜けるミント、石鹸。パヒューム。
太くなっていくウッドがどんどん濃くなり、冬の針葉樹林が浮かぶ。70分で喫了。
ややピークを過ぎた感は否めないが、特筆すべきは香りだ。
大きめのビトラが長く残っていることはあまりないかもしれないが、運良くそれを入手できたときは迷わず吸うことをおすすめする。