Trinidad Casilda '19

2023-06-29

カシルダはキューバ・サンクティスピリトゥス県トリニダの、小さな村の名前。
2019年の17回目のハバノス・コレクシオン(いわゆるブックヒュミドール)にその名前がつけられた。
24本入りで3000箱が作られ、Trinidadとしては二度目のブックヒュミドールとなる。

箱を開けると、巨大なビトラがお目見えする。
ずらりと並んだシガーはRG53x185mm、ビトラ・デ・ガレラ:ソブレサリエンテスNo.2(ビトラ・デ・サリダ:ダブルロブスト)。
このシガーのみのビトラで、荘厳な雰囲気さえ漂う。圧巻だ。

ラッパーはコロラド。表面はなめらかで、非常にきめが細かい。
トリニダは葉巻自体が美しいブランドだが、吟味された原料で作られるハバノス・コレクシオンはそれに輪をかけている。
ずっと吸わずにニギニギしていたくなる、葉巻というよりひとつの「作品」だ。
香りは芳醇なウッド。非常に喫煙欲をそそる。

フラットカット後、フットに火を回す。激烈にウッドが立ち籠める。
喫煙すると、ほんのり甘さをまとったなめらかなウッド。
カスタードクリーム、クルミ、しなやかなウッド。コニャックのようなコク。
豊かなパヒューム。まるでクリーム入りのアップルパイを食べているかのような錯覚に陥る。ミディアム。
とにかくうまみでガンガンに焚き付けるようなシガーではないが、しみじみ美味いのに華々しさがある。
豪華絢爛なのに毒々しさはない。
何より特筆すべき点はその香りで、一瞬でその場が花園へと変わる。


中盤、鼻を抜けるブーケに魅了されていると、変化の振幅は拡大していく。
輪郭が感じ取れるほどナッツが立ち上がり、発酵感と相まって洋酒を飲んでいる感覚に襲われる。
アフターにレザーとペッパーも現れ始め、感じる味覚は枚挙に暇がない。
海藻のような雰囲気は海風を思わせる。

終盤はウッドがさらに手を広げる。
ブローするとよりクリーミーさが増し、ナッツで口腔が塗りつぶされる。
無限に収縮と拡大を繰り返し、どこまでも広がる大木の根は、やがてアーモンドに収斂していった。

90分で喫了。
最高のボリュームで、繊細で抑揚の取れた極上のTrinidadを楽しめる。
ブックヒュミドールはハバノスの誇る最上のコレクションのひとつだ。
スモーカーは糸目をつけずにチャレンジしてみたい体験である。

LABEL : Trinidad 【Special】