Davidoff Dom Perignon '84

2015-06-03

 

俺はこの葉巻を吸わなければいけない。

サイズは47×178、フリエタNo.2(チャーチル)。1977年にリリースされ、キューバンダビドフ終了の年である91年に生産は打ち切られた。
濃い金のプリントとそれを引き立てるアイボリーのリング。ラッパーは発色の深いコロラド・マデューロ。非常に質がよく、葉脈も見えないラッパー。肌触りは滑らかでぬめっとしている。
鼻を近づけると、朽木、古い日本家屋の香り。

フラットカットして口をつけ、呼気を通すとテンションはない。
じっくりとヘッドを焦がす。その瞬間、別の世界に連れ攫われた。

絶妙なビター&スイートのバランス。
くどさはなくあくまでエレガントなそれは味蕾から脳をダイレクトに刺激し、一瞬白痴になったのかとひやりとさせる。そんなふうに思うほど感覚に穴が開いたのだ。
燻製アーモンドの皮、沈香が背景にある。
煙を吐いたアフター、その余韻にそれらが強く感じられる。
枯れは感じられず、味わいはなお健在できつい熟成香に翻弄される。

 

 

葉巻は吸い込みの強弱で味わいが微妙に変化するが、この葉巻の変化はまさに千変万化だ。
薄く吸い込めばオレンジピールなどを彷彿とさせる柑橘系のテイストが。
深く吸い込めば底のほうから噴出するような力強いスチール感が楽しめる。
しばしその遊戯に没頭する。

中盤、苦味を効かせた柑橘感が広大に伸び、上蓋を支配する。
内部が蒸れてきてコクと甘みが増大していく。痺れるようなそれが毒のように全身を回り、もうソファから立ち上がる気になれない。

終盤、テイストは劇的に変化する。
轟然と煙を上げる伽羅を咥えているような錯覚に陥る。心地よいビターに脳が浸され身体が弛緩していくのがわかる。ああ、なるほど。なるほど。
100分で喫了。多くの言葉は要らないだろう。

LABEL : Davidoff 【Aged】