Davidoff No.1 80s

2015-06-03



キューバンダビドフは全て生産地の移転により1991年以前にはディスコンとなっている。
伝説と化しているのはその古さだけではなく品質と旨さのためだ。もちろん、希少性もそれに拍車をかけている。

ピッグテールのラインナップはナンバーシリーズのNo.1とNo.2のみ。
サイズは38×192、ラギートNo.1(ロングパナテラT)。
表面には細かい産毛がびっしりと生えている。
ラッパーは痩せ、引き攣れた葉脈の影が走る。色は古ぼけたコロラド。
香りは紙の奥にほんのりウッド。生産されてから紙箱に収められたままだったためか。
今の葉巻とピッグテールが若干違う。ベージュがかった白リングはサイドにエンボスが打たれている。

 



フラットカット。枯れ切っているのでこのビトラでもドローは何のストレスもない。
フットを焦がす。ぽっかりと、鬱蒼とした森の入り口が開いた。
年月を感じさせるアロマ。芯まで枯れた古木。抑え目のビターがアクセントとなったふくよかなウッディ。
だが。
衰えが激しい。
ほぼ死にかけている。すでにピークを過ぎた葉巻なのは明らかだ。
往年のキューバンダビドフの残滓はそれすらも味わい深いが、旬を過ぎたものは絶頂を知っているだけに何やらやるせない。
強喫煙で蘇生を試みながら、在りし日のこの葉巻に思いを馳せ吸い進める。



生ナッツと独特な青インクのテイストがじりじりと立ち上がってくる。
中盤、葉巻の内部が蒸れて息を吹き返してきた。枯れ節の旨みが舌を締め付ける。まろやかなコクも。
抜けた朽木のテイストが背景に広がっているが、キューバンダビドフの味わいはまだ感じ取れる。

煙を探りつつ、上顎のヴィンテージ感を味わっていると葉巻は短くなっていた。
青インクでしたためられた古い手紙の束。
紙箱保存のためかそれとも固体としての寿命か。

希少なパッケージングだからとそのまま保存していたのが裏目に出たのかもしれない。

 

燃え尽きる葉巻を見ながら感慨にふける。


80分で喫了。
灰になった歴史を頬杖ついていつまでも眺める。

LABEL : Davidoff 【Aged】