Davidoff Château Margaux '80

2024-01-13

伝説、といっても葉巻には寿命がある。吸いどきがある。
キューバンダビドフは素晴らしいシガーだが、盛りを超えた時間が経てば経つほど、葉巻は急速にその味わいを失う。
そもそもダビドフ創設者のジノ・ダビドフ自身が「葉巻の寿命は15年」と言っているのだ。
無論、その年数を超えても美味いシガーはあるが、「美味かったと思われる」ピークを過ぎた味わいが否めないものがある。
実力以上に高まった名声というのは、葉巻に限らず珍しいものではない。

シャトー・マルゴーはキューバにおいてダブドフにより製造されたシガー。
1969年から1989年まで生産され、ダビドフがキューバを離れるのに伴って廃盤になった。
サイズはRG42x129mm、ビトラ・デ・ガレラ:マレバス(ビトラ・デ・サリダ:ペティコロナ)。SLBは25本・50本、その他に5本入りの紙箱で販売された。

市場の加熱で凄まじい値が付いているが、すでに投機を超えている。実態に即した価格や評判であれば良いが?
葉巻自体をチェックする。ラッパーは完全に油けを失い、繰り返されたブルームで白っぽくなっている。コロラド。
香りは無く、ごくごく僅かにウッド。白いキューバンダビドフのリングは変色している。

カットしてフットに火を灯す。
白樺の表皮が焼ける香り。
喫煙すると、ビター。
小麦菓子に含まれるているような、なんとなく丸い複雑なビター。
古い洋書、焦げたキノコ、味わいは軽く薄い。
ニコチンは残っていない。タバコの味わいは失せ、輪郭だけが残っている。輪郭だけを残し、中が揮発したように、その残滓だけがかすかに感じとれる。ライト。


中盤、背景となっているウッドなビターがやや盛り上がり、広がりを見せる。
喫煙をコントロールすると、香ばしいキノコや香木が若干その姿を見せる。
完全に「ピークを通りすぎた」「過去に美味かったであろう味わいの残り」だ。アロマはまあまあ。

終盤、ブローするとわずかにフローラル。感じられないほどごくごく浅い。
乾燥キノコ、カラカラに乾いて成分も蒸発した乾燥キノコだ。
アフターはビンテージシガー特有のウッド&ビター。40分で喫了。

形あるものはいずれ必ず失われる。
葉巻の「味わい」「香り」として評価するなら、それはもう失われていると言っていい。
それ以外の「かつて素晴らしかったもの」という点を評価するのはありだろう。
しかし俺は葉巻は吸ってなんぼ、という考え方なので、コレクター趣味とは相なれない。
ノスタルジーや記念ごとで吸うのに良い葉巻だろう。

LABEL : Davidoff 【Aged】