Ramon Allones 8-9-8 Cabinet Selection Varnished '02

2015-06-03


ラモンの8-9-8は2種類ある。

 

60年代から70年代半ばにかけて生産された旧リングのコロナ。
今回は後期版、70年代から2002年まで生産された新リングのものだ。
サイズは43×170、ダリア(ロンズデール)。
8-9-8ボックスに詰められた葉巻はすべて傑作だと思っているが、このラモンも素晴らしい葉巻だ。
 

ブルームが出て、それが長年の変化でラッパーに固着している。

古木の香り。表面から完全に油分は失われてカサついている。手の甲の骨のように葉脈が浮き出し、それでもなおやや産毛が見える。色はコロラド・クラロ。
ボックスコードが生産終了の年のものであるので願いを込めてフラットカット。触った感じはかなり硬かったが、ドローはよい。
 
着火すると、枯れた松の葉が燃焼したような芳香が漂う。
ミディアムフルの煙の中に、ビンテージ感溢れる鋭いウッディ。木質の甘さを秘めたアフター。厚い西洋杉。
同じ8-9-8でもパルタガスでもない、グロリア・クバーナでもない。
際立つ木質感は長大で野太い。
黒みがかった硬い灰を落として強めにに吸い込むとふわっとホワイトペッパーの微粉末が鼻腔を爽やかに通り抜ける。
ココアパウダーのニュアンス、野生の木の実の荒さ、喉の奥にいつまでも残るビターな余韻。
 
 

中盤に差し掛かると揮発性のスチールがどっと押し寄せてくる。
鼻の奥がキン……と疼く。テイストは木質さに甘みが増し、ナッティーに。余韻の甘さも相まって口腔に唾液が溢れてくる。
スパスパと空気を送り、黙々と吸うと……やはり予想通りでた、化粧香がぼわっと出現する。
これはいけない。意識を持っていかれる。
 
化粧香は5分ほど続いて消えた。
あとに残るのは舌下に感じる木の実の重い甘み、仄かなビターチョコ。
辛さは出ない……調子に乗ってけっこうなペースで吸い進めているが10年以上の経年変化と葉巻自体のポテンシャルだろう。
 
ラモンの終盤を知らせる鐘の音、強いペッパー。そろそろお別れの時間だ。
端正だが鋭いそれにいくばくかの寂寞を感じ短くなった葉巻をそっと灰皿へ置く。
70分で喫了。
様々な表情を見せるこのビトラ、どこかでまた会えるだろうか。

LABEL : Ramon Allones 【Aged】