オヨはエピクールシリーズとル・オヨシリーズに大別できる。
このドーファンはル・オヨの中でいち早く消えたビトラだ。2003年にディスコンになり、それ以前に日本にほとんど入っていなかったので見つけるのはかなり難しい。
サイズは38×152、ラギートNo.2（パナテラT）。

深い樹の芳香。湿り気を帯びた日本家屋。
ラッパーは蒼ざめたコロラド・クラロで、表面はややザラついている。SLBのみで生産されたビトラなので、フットは丸い。

特徴であるピッグテールを切り落とす。オヨのピッグテールにお目にかかれるのはこのドーファンだけだろう。

フットを炙ると広大な杉林が見えた。豊かなウッド。
一口吸い込むと、精妙なバランスの甘さとウッドが口腔に溢れ出た。
押し付けがましさのない、しかし芯があり存在感を持つウッディは立体的で、背景でもあり主でもある。そこから伸びている木質形の甘みもじんわり広がるような滋味深いタイプで、なんとも穏やかな気持ちで喫煙を誘導させてくる。
ほんのわずかに感じるビターがアクセントとなり、このバランスに思わず唸る。
 

3センチほどで灰を落とし、強喫煙してみる。
木がどんどん硬くなり、鉄になる。金属質の味わいは鋭く澄んでいてハッとさせる。

中盤をすぎると、ロースト感が増してくる。
ウッドと両立したロースト間は鼻腔を抜けえもいわれぬアフターを残す。葉巻内部が蒸れ、旨み、コクともにさらに湧き立ってくる。

終盤、ビターが際立つ。
ウッド、ビター、ローストに甘みが加わり渾然一体となり素晴らしいハーモニーを奏で終局へ向かう。
70分で喫了。

ル・オヨのなかで最もバランスが取れていると思う。
巻き上げるのに熟練の技が必要なためか、なんとも惜しいビトラだ。