ラッパーの濃淡、そして明暗

2016-04-25

ラッパーの色によりシガーの味わいは予想できる。濃い色はボディが重く、薄い色はボディが軽い。
いつのまにか、このような通説が正しいという流れになっているが、それは一概には言えない。

Partagas SERIE C No.3。ELはマデューロラッパーを使用している。

 

まず、ラッパーとは何かを再確認してみよう。「葉巻のパーツ」「葉巻の色について」のおさらいだ。これはシガーを構成する一番外側の外皮、化粧だ。重さは約12グラムのシガーの場合、1グラムにも満たない。

 

SERIE C No.3のラッパーを剥いて計測。1グラムもない。

数%の味わいの違いを知覚するのはかなり難しい。

近年はマデューロラッパーが好まれる傾向にある。
色が濃いラッパーほど葉の厚みがあるので破れにくく、巻きやすいため熟練していないトルセドールでもミスなく巻く事ができ、増産が容易い。ラッパー用の葉は日に当てる頻度が多いと厚みが増し色が濃くなり、日に当てないよう育てると色も厚みも薄くなる。
消費者と提供者の思惑が一致し、色の濃いシガーは近年増えている。

しかし過去には高品質なシガーほど色の薄い(=厚みも薄く破れやすい)クラロやカンデララッパーを利用していた。それはブランドが技術力と贅沢さを誇示する手段であり、Romeo y Julietaなどはカンデララッパーがウリのブランドだった。

そして古いヴィンテージシガーは時間を経てもなお現在出回っているシガーが比肩できないほど重いボディのものが多い。タバコ葉の品種改良で現代のシガーは吸いやすくなった、という事もあるが、時間を経るとシガーの味わいはマイルドになるはずなのに、である。

コイーバ ランセロ'95。緑みがあり、カンデラ寄りのクラロであることがわかる。

そう、シガーは理想的な環境に長期間保存する事により熟成が進み、ニコチンなど刺激分が分解されマイルドな味わいへと変化する。そしてそのような環境に曝され続ける事により、ラッパーの色は濃く変化する。
このように濃いラッパーはどちらかというとマイルド、ボディが軽めではないかという手がかりが多くあるが、やはり視覚的な影響は人間には強く作用するのかもしれない。

ここは実験を行うのが一番である。ということでキューバ、コンデ・デ・ヴィジャヌエバで同じブレンドでラッパーの色違いのハウスロールを数本用意してもらった。変な顔をされたが。
ロブストサイズのコロラドとマデューロ。コーヒーの専門家とワインの専門家をお招きし、これのテイスティングを行った。

用意したハウスロール。ヨーロッパ圏では色の薄いラッパーが好まれる。


周囲には非常に奇異に映るだろうそのブラインドテイスティングの結果は、「有意な差はない」だった。

大前提として、同じシガーを製作する事はできない。そしてこの場で感じられた差というのは、シガーひと箱の中での味わいの個体差の範囲内に収まる。
言われているようにボディに差はあるか、というと違いはない。ボディではなくテイストに(非常に小さな)差異は認められるが、それはブレンドの誤差に帰結するものだろう、というのが結論だった。
敢えて言えば、味覚のプロフェッショナルが濾しとって濾しとった最後に取り上げた粒に違いは感じられるが、有意な差とは言い切れない、という結論だ。

しかし、客観的なレビューと主観的な結論は違う。問題は自分自身がどう感じるか、これに尽きる。
簡単に片付けたりせず、この疑問はスモーカーそれぞれが向き合い、自分で答えを見つけてほしい。



Text by Tatsuya Igarashi:Twitter FaceBook

2017-02-24 更新