コラム|喫煙目的店の6要件

2021-01-18


 

2020年4月より「改正健康増進法」と、内容をほぼ同じくする類似の条例により、屋内は「原則禁煙」となった。
しかし、所定の基準をクリアすれば「喫煙しながら飲食できる店舗」として営業ができる。
これは「シガーバーや、店内で喫煙可能なたばこ販売店、公衆喫煙所など、喫煙を目的とする施設」について政府がガイダンスする基準に従えばよい。

これがなかなか理解しづらい内容のものなので、そのまま禁煙化に踏み切った店舗も少なくない。ここではそれをわかりやすく解説する。
「喫煙しながら飲食できる店舗」については喫煙目的店、喫煙目的施設などいくつかの呼称があるが、ようは同じである。これもわかりづらくさせる理由のひとつであるので、「喫煙目的店」でまとめる。
(また、「経過措置」として資本金や床面積などの規制のなかで飲食と喫煙ができる枠組みもあったが、2020年4月1日を過ぎているのでこれは割愛する)

下記の6つの要件を満たせば、「喫煙目的店」となる。

①喫煙を主たる目的としている
②主食の提供を主としていない
③設備基準を満たしている

④未成年者立入禁止(客・従業員ともに)
⑤店舗の出入り口に喫煙が目的の店舗である旨を掲示
⑥広告宣伝を行う際は喫煙が目的である店舗である旨を掲載


ひとつひとつ見ていこう。

①喫煙を主たる目的としている
喫煙を主たる目的とする、とはどういうことだろうか?これはつまり「許可を受けてたばこの対面販売を行っている」ということである。
たばこの対面販売を行う方法はこのふたつ。

A:「製造たばこの小売販売業の許可」免許を取得する
B:「製造たばこの小売販売業の許可」免許を持つ小売業者に自分の店舗での出張販売の許可を取得してもらう

「A」とはたばこ店のことである。これは立地や建物設備の条件など非常に細かいので割愛する。
「B」、つまり店舗を「たばこの出張販売所」にするには以下の4つのステップを踏む。

1:申請書類の作成
「製造たばこの小売販売業の許可」免許を持つ小売業者、つまりたばこ屋さんの協力が必要になる。
たばこ屋さんに「出張販売申請書」を作成してもらい、JT(日本たばこ産業株式会社)に提出してもらうことになる。これは地図や図面を描いたりと、車庫証明の取得申請に似ている。

2:現地の調査
申請された出張販売所(店舗)の現地調査が行われる。これはJTから検査官と呼ばれる方が来店し、申請された書類と現地の情報に誤りがないかチェック、たばこ販売場所・保管場所のチェック、喫煙設備(灰皿などだ)や内観・外観の撮影などが行われる。もちろん店舗運営者の立ち会いが必要になる。

3:役所による審査
当該地域を管轄する財務局の審査が行われる。
JTの検査官が現地の調査で用意した資料での審査になるので、基本的にここで弾かれることはない。出張販売の許可書が発行・郵送される。

4:許可書の受領
許可書が店舗へ到着する。同封の納税用紙で登録免許税の3,000円を金融機関で支払い、領収書をJTへ送り出張販売の申請は完了となる。

これにて店舗は「喫煙を主たる目的としている」店舗へとなる。


②主食の提供を主としていない
「主食」の定義は非常に曖昧であり、改正健康増進法にはこう記してある。

――「主食」とは、社会通念上主食と認められる食事をいい、米飯類、パン類(菓子パン類を除く。)、 麺類、ピザパイ、お好み焼き等が主に該当するものであるが、主食の対象は各地域や文化により異なるものであることから、実情に応じて判断するものであること――

おつまみ等はこの範疇に入らない。そして「主食の提供を『主』としていない」というのが肝で、「米飯類、パン類、 麺類、ピザパイ、お好み焼き等」がお店の「メイン」でなければ良い、とされている。これはお店側の解釈によるだろう。


③設備基準を満たしている
設備基準とはこれである。

・たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていること

壁と天井があればよい、ということである。これがないお店は逆になかなかないので、普通はクリアできる。それと喫煙設備として、灰皿があるかもチェックされるが問題ないだろう。

店舗が非路面店の場合は「たばこの煙が流出することを防ぐための措置」(のれんやカーテン、サーキュレーターなど)が必要になる。


(※:非路面店とは「地上1階の店舗で出入口がビル等の共用部分の店舗」「地下1階、地上2階以上の店舗で出入口が共用部分の店舗」「地下1階、地上2階以上でエレベーターが店舗内に直結している店舗」のこと。
「たばこの煙が流出することを防ぐための措置」とは「出入口において外側から内側に流入する空気の気流が0.2 m/秒以上」と定められており、特に2階以上の店舗でエレベーターが店舗内に直結している場合階段の出入口とエレベーターにそれぞれ対策が必要となる。
逆に路面店とは「地上1階の店舗で出入口が地上の店舗」「地下1階の店舗でも地上に出るまでの階段・通路が店舗専用である店舗」「地上2階以上の店舗でも出入口と外階段が繋がっている店舗」を指す。)


ちなみにこの「改正健康増進法」は「屋内の受動喫煙を防止する」ために施行されたものであって、建物外の煙についてはとくに規制がなく、テラス席などがある店舗ではその席での飲食・喫煙が可能だ。

(※:屋外の喫煙場所設置に関しては法律・条例で規制はないが、受動喫煙を生じさせることがないよう配慮が求められるため、来店客を店舗外の路上で喫煙させると保健所の指導対象になる場合がある。もちろん禁煙店舗であってもだ。)

別の話だが、店舗の「一部」を喫煙可能にする「喫煙室」とするにはハードルが上がり、上記に合わせて下記の条件を満たす必要がある。

・喫煙室の出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が、0.2m毎秒以上であること
・たばこの煙が屋外または外部の場所に排気されていること
・室内への未成年の立入禁止

気流・排気の条件を満たすには換気扇の工事等が必要となるだろう。
そして喫煙室は3種類に分けられる。
喫煙専用室:室内での飲食不可
喫煙可能室:室内で飲食可
喫煙目的室:室内で飲食可(主食を除く)


④未成年者立入禁止(客・従業員ともに)
未成年者の保護が目的のひとつとして盛り込まれた法律なので、未成年者の入店を断る必要があり、従業員に未成年を雇用することはできない。
入り口にワーニングを施すのもひとつの手だろう。


⑤店舗の出入り口に喫煙が目的の店舗である旨を掲示
どのような喫煙設備を設置しているかについて説明する標識を掲示するよう、法律には定められている。が、法律条文内には「これでないといけない」という指定はない。
厚生労働省が提供する標識を入り口に掲示している店舗を街角で見かけるが、喫煙目的店であれば「このお店は喫煙目的店ですよ」とわかるものが入り口に掲示されていれば良い。手作りでも構わないのだ。


⑥広告宣伝を行う際は喫煙が目的である店舗である旨を掲載
お店の宣伝をする場合には、店舗が喫煙目的店である旨を明示する必要がある。チラシやフリーペーパーに掲載する場合などもだ。


以上6つの要件を満たせば、法律施行前に喫煙可だったが禁煙にした飲食店も、新規開店する飲食店も、店内で喫煙・飲食両方を提供することができる。
しかし、一番のネックは「①喫煙を主たる目的としている」、つまりたばこの出張販売の許可取得だろう。
懇意にしているたばこ店が近所にあって、手取り足取りすべてやってくれるなら良いが、面倒な作業なので渋い顔をされることだろう。
よってここでも「一般社団法人日本シガーバー協会」をおすすめしたい。

日本シガーバー協会は外部協力団体に「製造たばこの小売販売業の許可免許を持つ小売業者」をもち、そこが出張販売の許可を取得する作業を行ってくれるとともに、設備基準についてのアドバイスも行ってくれる。

つまり入会すると①に必要な「たばこの出張販売の許可取得」と③についての「設備基準に不備がある場合のアドバイス」が受けられるのだ。もちろん無料である。
これは東京都や大都市圏のみでなく、日本全国対応している。
また協賛会員としてJTも参加しており、現地調査の対応についてもスムーズだ。

喫煙目的店化を希望する入会者の入会金3,000円は、出張販売の許可書の発行が確認されたら返金されるので、①-4の登録免許税の3,000円に充てれば実質無料になる。
(万が一許可が降りなかった場合も返金される。)
月会費である1,000円は、会員リストを含む協会ホームページの維持費などに使われる。
これは保健所など指導を管轄する役所が喫煙目的店のリストを保有していないため、検査・調査で店舗の日々の業務が止められないよう、閲覧可能な状態の維持が必要だからだ。
(改正健康増進法に対応する店舗の審査を行うのは財務省管轄だが、店舗のチェックを行うのは厚労省管轄である。恐るべきねじれだ)

これらの活動は改正健康増進法の啓蒙と遵守という設立のモットーに基づかれたもので、この理念に賛同する個人・法人は賛助会員としての入会も可能である。

新型コロナウイルスが猛威を振るい、時短要請やテレワークの拡充で街の人出の極端な減少により飲食店の窮状は終りが見えない。それ以前にも、屋内禁煙化で来店客の大きな落ち込みがあった店舗も多い。
そんな中でも喫煙目的店が堅調な売上を示している例は多くあるので、喫煙目的店化についてわかりやすくまとめたこのコラムを参考にしてもらいたいと思う。

 

Text by Tatsuya Igarashi:Twitter FaceBook