コラム|切られたワランティ

2017-09-15


ハバノスに必ず貼られているワランティ・シール。

 

インターネットの発達で、家から出ずとも葉巻は海外から通販で購入する事が可能になった。非常に喜ばしい事で、提示されたプライスにたばこ税や関税、送料を上乗せして払えば海外のショップから購入することが出来る。
Habanos S.A.のフランチャイズたる各国のLa Casa del Habanoも積極的にネットでの販売に進出しており、スモーカーとしてはとても便利な時代になったものだ。

そういった流通の発達で非常に増えてきたものがフェイクシガー、いわゆる偽葉巻である。
種々の資料から、キューバンシガー市場における贋物は他の高級ブランド商品の市場に比べ驚くほど高い数字なのがわかる。そして、その拡大はネット通販によってもたらされたものと言って良い。


葉巻の流通は、簡単に言えば製造元であるHabanos S.A.、その下に各国の大卸であるディストリビューター、そしてその国のLa Casa del Habanoという順に流れている。(La Casa del Habanoはディストリビューターからしか卸を受けない)
La Casa del Habanoは実店舗にもネットショップ上にもこのロゴが掲げられている。これ以外は様々なところから卸を受ける並行業者である。


La Casa del Habanoである事を示すロゴマーク。


贋物対策のため、ハバノスのボックスにはすべてワランティ・シールが貼られている。スペシャル・ヒュミドールなど大型の商品に対しても例外はない。
2009年頃からHabanos S.A.はさらにそれを強化し、流通・販売元の把握や真贋の確認のため、マイクロプリント・管理用バーコード・シリアル番号入りの物へと刷新した。ユーザーとしては公式サイトでシリアル番号を打ち込めば、真贋の照合ができるメリットを享受できる。
海外ネット通販で葉巻を購入している方は見た事があるかもしれないが、このワランティ・シールからマイクロプリント・管理用バーコード・シリアル番号が切り取られて判別不能な状態で届く事がある。

 


その理由をメールで問い合わせると答えてくれる場合があるが、だいたい意訳すると「エリア外への販売なので流通の痕跡を消すため」という回答が返ってくる。(なかには「自社での管理用のバーコードの誤作動を防ぐため」などといった回答をする所もあったが、これはお粗末な話だ)
ハバノスの販売は世界の各エリアごとに割当が決められており、ネットはそれを横断する形となるのでショップはこのような対応を行うことがあるのだ。
なので、この「シール切り」がされた=フェイク、というのは早計である。問題は、この地域外への販売を行う為の処理を悪用して、フェイク業者が入りこむ隙間が生まれるということだ。

ディストリビューターやLa Casa del Habanoは、La Casa del Habano以外のたばこ店や仲卸業者、並行業者へも商品を提供する。これは正当な販売業務だ。
しかしフェイク業者はこのような仲卸業者、並行業者など様々なところから葉巻を調達し、それを入れ替え、贋物を混ぜ込み販売する。
「シール切り」で流通経路や真贋の照会が行えないので、フェイク業者のリスクは低い。
中には欠損のないワランティ・シールが貼られたままのシガーの箱を集め、丸ごとフェイクやフェイクを混ぜ込んだシガーを詰めて販売しているところもある。これでは外見から区別の付けようもない。お手上げだ。


ワランティ・シールのマイクロプリント。


せっかくお金と時間をかけて、楽しみに待っていた葉巻が真っ赤な贋物では、スモーカーは浮かばれない。
もし、手元で大事に保管していた葉巻がフェイクであると知ったら、非常にショックを受け羞恥を感じる事だろう。もしそれをスモーカー仲間に分けていたのであれば、目も当てられない。

これを防ぐ方法はないか。
一番簡単な方法は、La Casa del Habanoで購入する事だ。
Habanos S.A.のフランチャイズたるLa Casa del Habanoは、指定されたディストリビューターから卸を受けた葉巻しか扱わない。フランチャイズ加盟の為の様々な契約事項が、他からの流通をシャットアウトするのだ。このため、La Casa del Habanoで購入する葉巻は「すべて本物」であることが保証される。

あとは正規のディストリビューターまたはLa Casa del Habanoから葉巻を調達している、と納得がいく絶対の信頼がおけるショップで購入することだ。正直なところ、このふたつしかない。(La Casa del Habano以上の信頼がおけるのであれば、すでにそのショップはLa Casa del Habanoになっていそうなものだが……)

シガーのネットショップを色々と物色していると、不審な所が数多くある。
世界各国で販売されるシガーの価格は、たとえLa Casa del Habanoでも各国の税制が大きく作用しているためばらつきがあるが、安値を大きく割り込む事はない。卸値から算出される価格帯というものが存在するからだ。
この価格帯を割り込んでいるショップ、個数制限なく送料がないショップ、本来なら流通量が少ない限定品を広く取り揃えているショップなどは限りなく怪しい。

当然の事ながら、値段には裏付けがある。何の理由もなく安値が付くはずはない。消費者として、そのような観点は必要不可欠である。
「安物買いの銭失い」——フェイク業者は「安さ」が餌の罠だ。
日本国内でも偽葉巻を扱う店舗が現れる昨今、悲しい思いをするスモーカーが増えないよう願うばかりである。


蛇足だが、ここではフェイクの判断について味の話はしない。
農業生産品を人の手で作り上げるハバノスは、同じ一箱の中で味わいが異なる事も往々にある。そしてその「ゆらぎ」こそが最高の嗜好品とされる所以のひとつである。
少しばかりその葉巻を試してみて、真贋を見極めようとするのはブラインドテイスティングに等しく、一般には非常に困難であり、個人的な感想の良し悪しを「真贋」とはき違える危険性も潜んでいる。
そもそも手元に届いた後、フェイクかどうかの判別をしないとならないという状況を避けるのが賢明である。



Text by Tatsuya Igarashi:Twitter FaceBook