コラム|「バーという嗜み」という嗜み
2015-10-09
「バー」という存在は、シガーと切っても切れない関係にある。
今でこそ、健康ブームや紙巻きタバコの値上がり等により「習慣喫煙」離れが進み、「趣味喫煙」が大きな広がりを見せはじめ、シガーを楽しめる場所が増えてきた。しかし、やはりシガーを愉しむということについては場所・環境というもの抜きでは語れない。バーはシガーの受け皿として大きな存在感を放っている。
だが、バーは葉巻の煙を愉しむだけの場所ではない。
今更語らずとも、と面映い顔をするスモーカーは多いだろう。わかっている、たくさんのバーに行きたくさんの酒を飲んできた、と。しかし、バーを運営するバーテンダーは日々切磋琢磨し、時代の流れを読み、常に進歩し進化している。あなたはバーとのつきあい方を時々でも振り返っているだろうか。
「バーという嗜み」という本が上梓された。東京六本木の会員制バー「Ne Plus Ultra」のマスターバーテンダー伊藤学氏の著作である。
氏の経験や考え方を通して、初心者へわかりやすく書かれたバー教本というのが狙いと思われるが、上級者にも「気づき」を与える、ありきたりなガイドブックとは一線を画す内容になっている。
「バーは寿司屋に似ている」「バーフードはお酒をよりおいしくするためにある」など斬新ともいえる表題には、バーテンダーとしてお客様を満足させるために考え抜いた氏の哲学がうかがえる。
単なるガイドブックではなく、軽妙な読み物としてもお勧めできる一冊だ。
もちろん、章を割いて書かれたシガーとバーに関する内容も、シガーの入り口として申し分ないものとなっている。シガー片手に、ぜひ読んでいただきたい。
その夜に開いたバーの扉の向こうは、きっと今までと少し違うように見えるだろう。
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