Goodbye Fidel, what to do USA

2016-11-26

2016年11月25日午後10時29分、フィデル・アレハンドロ・カストロ・ルスは亡くなった。90歳だった。
毀誉褒貶の激しい彼の経歴や詳細は省略する。Wikipediaでも見れば良いだろう。または、なぜかまるで友人であるかのように語りたがる人がSNSやバーの端っこの席にいるので聞いてみてもよい。
スモーカーにとってはコイーバというブランドを設立させた、シガー界の巨人だ。



ある日フィデルは運転手兼用心棒の「チーチョ」が咥えているシガーに興味を持った。
素晴らしい芳香を放つそれは、彼の友人であるトルセドール、エドアルド・リベラが巻いてくれたものだという。
早速フィデルはその葉巻を巻かせるために工場を造った。元娼館の建物を改装し、「エル・ラギート」という名をつけ、リベラを工場長に据える。ブランドの名前はキューバの先住民族タイノ族の言葉で「たばこ」を指す「コイーバ」となり、ブランドロゴはタイノ族の横顔のシルエットとなった。
時に1966年。Habanos S.A.の旗艦となる、世界一有名なシガーブランドの誕生だ。



それからちょうど50年。2016年、フィデルは亡くなった。
彼が愛したシガーはコイーバ最初のビトラとなり、「ランセロ」(槍騎兵)と呼ばれている。近年商売っけが凄まじいHabanos S.A.がランセロで限定ヒュミドールなどを作ってくれるに違いない。期待している。

 


「フィデルが逝ってしまった!キューバンシガーは一体どうなるんだ!」
SNSに流れるそんな嘆きは見当違いだ。
高齢のフィデルはいつかいなくなる。世界最大のシガーメーカーであるHabanos S.A.が何も考えていないわけがない。

すでにアメリカに明るいロドリゴ・マルミエルカ氏が外国貿易外国投資大臣に入り、Habanos S.A.のキューバ側代表も人事が組まれている。
そして2016年10月15日にはアメリカへのキューバンシガー持ち込みの100ドル制限が解除されている。フィデルの死は今の流れに影響を及ぼしていない。それ以前からハバノスは変化の波に流されているのだ。


このようなことは以前にも触れたが、現状すでに世界的なシガー不足に陥っている。
著名なヨーロッパのショップでもシガー、とくにコイーバは枯渇状態であり、今後世界中で争奪戦が繰り広げられるだろう。この流れを動かすのがアメリカだ。

フィデルの死よりも市場に大きなインパクトを与えるのはアメリカのドナルド・トランプ新大統領だ。
2017年1月の新大統領着任後、対キューバの姿勢はどうなるのか。融和政策を進めていたオバマ大統領から、180度転換される可能性が出てきた。それは彼の支持票田の意向だ。
反カストロ、反キューバのキューバ系アメリカ人財団は共和党の広大な支持団体だ。それにより、アメリカの対キューバ政策が後戻りする可能性がある。



しかし、アメリカはもう一度キューバを味わってしまった。この流れは止めようもなく見える。
どうなるも、トランプ新大統領の動きひとつだ。日本のスモーカー諸兄はきっと、シガーに火をつけて事の成り行きを見守っている事だろう。たんまりと買いためたシガーボックスの詰まったイグルードールに腰をかけて。