銀座三越|銀座のデパートの秘密基地

2015-06-03

銀座三越の五階には、葉巻売り場がある。

東京の酔狂な葉巻好きであれば既にご存知の方も多いのではないだろうか。
ハバノス5大ブランドは勿論のことながら、三越オリジナルブランドのノンキューバンシガーなどの取り扱いがあり、葉巻喫煙デバイス(灰皿、ライター、カッターなど)の品揃えも幅広く、S.T. DupontやDunhillにはじまる高級品から割とリーズナブルな実用性に長けたものまでスキがなく、シガースモーカーのニーズに合った品物を見つけるのは容易だ。
スタッフさんにはフカシロから出向されてきた方もいらっしゃるので知識は非常に豊富、接客時の対応も抜群。
葉巻を選ぶ際には、的確なアドバイスを自信を持って答えてくださる。
 
また、こちらの売り場には、葉巻のテイスティングルームも設置されている。
買った葉巻をその場で喫煙することができるのだ。
しかも、テイスティングルームを使用するとチョコレートとおいしいお水が無料でサーブされる。
三畳ほどの小さな空間だが、しっかり奥深く腰掛けられるチェア(本来、葉巻というのは椅子に腰を深くうずめてリラックスした状態で吸うものだと思っている)がふたつ備わっており、照明はやや暗め。小さなラウンジがそこにある。
天井にはスポットライトが絶妙な角度で配置され、揺蕩う煙の様子が明瞭に確認できるようになっている。
小さな本棚には、葉巻専門雑誌Humidorなどの好事家が喜ぶマニアックな書籍が立てかけてあり、葉巻をスパスパやりながら遠くキューバの景色に思いを馳せ、周辺知識を勉強できるようになっている。
 
つまり、至れり尽せりというヤツである。
 
久しぶりにこちらに顔を出した今日は、ディプロマティコスを吸うことにした。
ディプロマティコスは1966年に創設された割と新しめのブランドで、モンテクリストのセカンドラインという位置づけだそうだが、実は私は親分のモンテクリストよりもこのディプロマティコスの方が好みなのだ。
ときに現代のモンテクリストの葉巻がカサカサと味気なく香りも乏しいのに対し、ディプロマティコスの葉巻は珪藻土を燃やしたようなどっしりとした力強さに鼻腔を貫く香ばしい芳香がひたすらに溢れ続ける。
マイナーなブランドだがキューバ葉巻の真髄を味わえるいい葉巻だ。
 
ウォーキングヒュミドールに入りディプロを物色すると、丁度2番が三本ほど陳列されている。
手にとって確認してみると、ラッパー表面が力強い表情ながらもカサカサしておりシガーバンドがゆるんでいることに気が付いた。これは間違いなくエイジドシガーである。
それも、10年は寝かせたであろう極上品と見受けた。他の客にばれないよう小躍りをする。
足早にテイスティングルームに戻り、はやる気持ちを抑えながら持参のXikarカッターでフラットカット、ターボライターで即着火。そしてひと吸い・・・・・
 
鮮烈な芳香が鼻を貫く。口の中にジューシーな旨みがひろがり、味蕾が刺激され唾液が溢れてくる。
深く腰をかけて足を組み水を飲みながらただただひたすらに喫煙を繰り返す。

「ううむ、久しぶりのアタリシガーだ。うますぎる」

少しするとニコチンが徐々に効いてきて足や手に回り全身の筋肉が弛緩し恥ずかしい顔つきになってしまう。うまい葉巻だけが体にもたらす効能だ。

 
私は、良い環境で熟成された年代モノの葉巻というのは共通したプロファイルがあるように思う。
それは「ガス香」と「キノコ香」のふたつである。
前者は、プロパンガスのようなアブない系の揮発性の芳香。
後者は、冬子などの乾物系キノコ類を彷彿とさせるおいしい香り。
葉巻を吸わない方には到底理解できない表現かもしれないが、実際にそう感じてしまうのだから葉巻の世界は奥深い。

チョコレートとお水をちびちびやりながら葉巻を吸い進め、ラスト3センチで喫了。
キノコとガスにまみれた、予想外に素敵な葉巻体験だった。
 

銀座三越シガーテイスティングルーム

東京都中央区銀座4-6-16 銀座三越本館6階
営業時間:10時30分~午後8時

電話番号:03-33562-1111

定休日:添付休業日に準じる

 

Text by S.Oya