MAZDAターンパイク箱根|富士山とシガーを

2015-10-28

たとえば土曜日の昼、強い太陽光線に負けて目が覚めてしまったとしよう。
窓を開けると、そこには雲一つない、一面の青空が広がっている。気温も24℃程度だ。
次の瞬間、私は衝動的に、車に飛び乗り箱根方面に向けて走りだしていた…………。

早朝に起きなかったのが悔やまれる。
昼に出発して夜に戻るコースだと、間違いなく帰りの東名の渋滞にハマることになる。
しかし、このまま土曜日の午後を怠惰に過ごすことと天秤にかけると、秋のひんやりとした空気を感じながら山道を走るほうが人生の充実度は断然上に思えた。

環八から東名用賀I.Cに入り、厚木まで一気にアクセルを踏み抜く。
東名は路面が意外とバンピーであり、気を緩めずにステアリングを保持する必要がある。
福野礼一郎著「スーパーカー野郎」には、1980年代、この道をチューニングカーが300km/hオーバーで夜な夜な駆け抜けたという記載がある。
マリオ・ロッシの組んだチューンド・アメリカンV8を積んだデ・トマソ・パンテーラの地鳴りのようなエンジン音、RE雨宮のロータリーエンジンの金切り音、焼けるタイヤの匂い、風切音、そんなものが追い越し車線を走り去っていく感じがした。
本当にこんな道でそんなことをやっていたのだろうか。そんなことを思いながら、県を越えて空気の匂いが変わったことを感じた。


厚木から小田厚に入り、荒れた路面を走り抜けていく。
いつもならそのまま箱根ターンパイクへと向かうが、その日は特段天気がいいこともあり、大磯で下りて西湘バイパスを経由することにした。
時間に余裕があるならば、「大磯プリンスホテル」で休憩をしてみてもいいだろう。
海の見えるガラス張りのカフェからの景色が、心に余裕を与えてくれるはずだ。

この道はあまり飛ばすのには適さない。
なぜならば、天気の良い日の西湘バイパスは突き抜けるように気分がいいからだ。
水面に陽の光がきらめき、まるで氷のようである。
アクセルを緩め、陽の光と海風に身を任せると、日常のストレスが溶けてなくなっていく。

切り立った山とどこまでも続く海を眺めながら、走行車線をゆったり流すとまるで気分は——
何か外国の地名を挙げようと思ったが、そういえばまったく思いつく場所が無い。
海と山の隙間を走れる道というのが、日本列島の独特な地形がもたらす、非常に”日本的な”道であることを再認識した。

ゆっくり景色を楽しみながら流しても、西湘バイパスは距離が14.5kmと短いので、すぐに走り終わってしまう。
終点付近にて現れ始める、地味な「ターンパイク」という看板を頼りに分岐を左に進むと、関東の走り屋垂涎のワインディングロード「MAZDAターンパイク箱根」の入り口が見えてくる。
このコースは片側2車線であるが、道幅が広く高低差に富み、ゆるやかな中高速コーナーが多い。
関東の車好きで、知らない奴はモグリである、と言っていいほど有名なコースだ。

ススキの中を駆け抜けてゆく。
高度が上がるにつれて気温が下がり、空気の密度が上がってくるような錯覚を覚える。

頂上、「大観山」に到着すると、「MAZDAターンパイク箱根 スカイラウンジ」がある。
週末などは、よく雑誌の取材や試乗会などを開催している場所であり、駐車場にはレアな車、高価な車、走り屋系の車が新旧問わず駐車してある。見ているだけでも楽しい。
ここの2階に、今回紹介するシガースポットは存在する。

1Fはサービスエリアなどにありがちな、食堂があってちょっとしたカフェスタンドがあって、というラインナップだが、2Fのティーラウンジは内装がちょっとオシャレで景色も格段に良い。
ここで400円の「ココア」を注文し、おもむろに灰皿を借り外のテラス席へ出る。
喫煙可能な場所は室外のみだが、ここからの眺めが極上なのだ。
葉巻に着火する。そして澄み切った空気を肺いっぱいに吸い込み、葉巻のドローイングを開始する。

晴れた日であれば、目の前一面に富士山と芦ノ湖を見渡せる。
こんなロケーションで葉巻が吸えるのは、おそらくここだけではないだろうか。
あまりにも贅沢な場所だ。

椅子はさほど座り心地が良いわけではないが、葉巻一本くゆらせるのには十分だ。
アシュトレイや飲み物がしっかり置けるスペースが肘掛けの脇に確保されているのも快適である。

ココアをおかわりし、それを飲み終える頃に、同時に葉巻も吸い終えた。
まだ午後の2時をちょっと回ったところである。
さあ、これからどこに向かおうか。
芦ノ湖スカイラインから御殿場方面に下り、蕎麦を手繰りに「蕎仙坊」にでも行こうか。

まだお腹が空いていない?
であれば、「とらや工房」でお茶をしてもいい(葉巻が吸えたらどんなに最高か、と毎度思う)だろう。
はたまた、「姥子温泉秀明館」の静寂で贅沢な空間で湯浴みをするのも乙なものだ。
箱根の楽しみ方は無限である。


旅の要所要所で、葉巻というエッセンスを加えることの楽しみを知ってしまった者は、もう葉巻の呪縛からは逃れられないだろう。
少しの間のシガータイムが旅の楽しみを増す強烈なスパイスとなり、ぴりりと効果を発揮するのである。
旅は葉巻連れ、世は情け、である。

MAZDAターンパイク箱根 スカイラウンジ

神奈川県足柄下郡湯河原町鍛冶屋955

営業時間:9時〜16時30分

電話番号:046-523-0381

[シガーマップ]「MAZDAターンパイク箱根 スカイラウンジ」のレビュー

 

Text by S.Oya