H.Upmann Coronas '00

2022-11-14

新型コロナウイルスの風評被害というわけではないが、コロナはハバノスでは絶滅危惧種となっている。
世界的な禁煙の風潮で、葉巻の大きな市場であるヨーロッパでも屋外で吸わせることが多くなり、日本より緯度の高いヨーロッパでは凍える前に吸い切る必要がある。
そうなると短く、そして吸いごたえのある太さが必要となり、ごんぶとビトラが需要に合う流れとなった。
ハバノスはそのあたりしっかりマーケティングしており、新たに生み出されるシガーもそのような形になるという道理である。大きな葉巻が廃盤になっていったのもそういう流れが一枚噛んでいる。
葉巻のビトラも流行り廃りがあるというわけだ。

閑話休題。
H.アップマン コロナスは1960年代から2002年まで生産された。
サイズはRG42x142mm、ビトラ・デ・ガレラ:コロナス(ビトラ・デ・サリダ:コロナ)。由緒正しいコロナである。
昔のスタンダードラインが皆そうであったように、様々なパッケージが展開された。
ドレスボックスは10本・25本入り、SLBは25本入り。変わり種では25本・50本入りのガラスジャーも販売された。

箱を開ける。香りはほとんど感じられず、わずかに紙のような香り。
ボックスプレスでフットは四角くなり、コロラドのラッパーは経年変化で油分は失せている。リングは激しく変色している。

キャップ周辺を割らないようにフラットカット。フットに火を灯す。
落ち葉の焚き火の煙、白樺の皮が燃える。
喫煙する。甘み。
ウッドとレザーが融合した複雑な甘み。背景にはビターが控える。
ドライなタッチで、味わいは砂糖を入れた紅茶、古い手紙束、乾いた牧草、青インク、シダー、分厚いなめし革と変化に富む。ミディアムライト。

ピークは過ぎたような感じだが、硬さ重さが皆無の澄んだ味わいは脳天を直撃する。
灰を落とすと、そよ風のようにごく柔らかくビターが通り過ぎる。
この繊細で複雑な味わいの変化の連続が、エイジドのシガーの醍醐味だ。


中盤は喫感はライトに近づいていく。
レザーとウッドが立ち上がり、甘みは遠のく。アフターは浅い。
奥の方に魚介出汁の塊のようなうま味があり、波のような変化で折々に触れられる。

終盤、牧草とビターがズームしてくる。
ブローすると大木の焚き火のような野太いウッドが炸裂する。
塩っぽい海藻のような口当たりとビターを残し、60分で喫了。

終盤につれてシュリンクしていったが、長すぎる熟成で味わいが徐々に抜けていってしまうのは葉巻の宿命。
それを楽しむのも葉巻の趣だろう。
刻まれた時間を味わうのも、シガーの喜びのひとつである。

LABEL : H. Upmann 【Aged】