日本企業がキューバに熱視線 

2015-06-17

 米政府が5月29日にキューバに対するテロ支援国家指定を解除したことを受け、商機拡大をにらんだ日本企業がキューバに熱視線を送っている。11月にも日キューバ官民合同会議の初会合が現地で開催されるほか、国際協力機構(JICA)は今夏にもがん治療の医療機器調査団を派遣、日本企業の輸出を後押しする計画だ。これまで日本は米国に配慮してキューバで目立った経済活動を行ってこなかったが、今後企業の進出ラッシュが起きる可能性がある。

 岸田文雄外相は4月末から5月初めにかけて、キューバを訪問。官民合同会議の新設で合意するとともに、無償資金協力の再開方針を打ち出した。この訪問には大手商社やメーカーが参加する任意団体「日本キューバ経済懇話会」を中心に双日、住友商事、コマツ、マツダなどメーカー約15社30人が同行。外相の海外訪問に産業界が同行するのは異例で、キューバに対する関心の高さをうかがわせた。

 キューバは昨年6月に新外国投資法を制定。外資誘致で輸出や雇用を拡大させる経済成長を描いており、今回の指定解除で誘致戦略を本格化するとみられている。

 同経済懇話会の近藤智義会長は「医薬品や医療機器、再生可能エネルギー分野などで日本の技術が期待されている」とキューバでの商機をこう話す。日本貿易振興機構(ジェトロ)も、11月のハバナ国際見本市に7年ぶりに出展することを決めた。

 特に期待されているのが医療機器だ。JICAは今夏にも現地に医療機器調査団を派遣。来春にも同国で死亡率首位のがん治療の日本製内視鏡外科手術システムや検査機器を選定、同国の医療システム向上を目指す。

 キューバはベネズエラなど世界66カ国に5万人超の医師を派遣しており、有力な外貨獲得手段になっている。4月に首都ハバナで開催された「医療EXPO」にはアフターサービス拠点を持つオリンパスや島津製作所など日本企業約10社が参加。大手商社は「世界で活躍するキューバ人医師に医療機器を売り込めればその波及効果は大きい」と期待する。

 将来は鉄道、港湾、空港のインフラ需要も期待できそうだ。

 ただ課題も山積する。一般通貨と外貨に交換可能な通貨が混在する二重通貨制に加え、企業が自由に社員を採用できない雇用制度も存在する。

 11月にも開催される官民合同会議で投資環境をどこまで改善できるかが鍵を握りそうだ。(上原すみ子)

SankeiBiz